奇才ティム・バートンの描く少しのホラーと美しさとコミカルな世界『チャーリーとチョコレート工場』

チャーリーとチョコレート工場ウィリーウォンカイラスト 2000年代 洋画

今回は2005年の公開から今だに高い評価を受け続ける『チャーリーとチョコレート工場』について解説してきます!

基本情報

1971年版では、背の低い俳優さんに同じメイクを施して再現したウンパルンパ。2005年版ではディープ・ロイがCGで影分身してなんと1人で演じきりました。彼のウンパルンパっぷりはまさしく本物!コミカルで意地悪な強烈なキャラは一度見たら忘れられません。

監督 ティム・バートン 脚本ジョン・オーガスト   全世界の興行収入《約630億》 

主な出演者

  • チャーリー・バケット→フレディ・ハイモア
  • ウィリー・ウォンカ→ジョニー・デップ
  • ウンパ・ルンパ→ディープ・ロイ
  • ベルーカ・ソルト→ジュリア・ウィンター
  • バイオレット・ボーレガード→アナソフィア・ロブ
  • マイク・ティービー→ジョーダン・フライ
  • オーガスタス・グループ→フィリップ・ウィーグラッツ

解説 原作者の意を汲んだチョコレート工場へ

映画の公開は2005年ですが、実は1991年から夢のチョコレート工場の再映画プロジェクトは始まっていました。

プロジェクトが動き出して公開まで長い年月がかかったのは、原作者であるロアルド・ダールが映画化に懲りていた事が原因でした。

なぜ映画化に懲りたのかと言うと、1971年に公開されたジーン・ワイルダー主演の『夢のチョコレート工場』における、原作との乖離が起こったからです。

脚本の段階であくまでもチャーリーが主人公と訴えるロアルドダールとジーンワイルダーの圧倒的な魅力からウォンカを主人公としたい製作陣との対立がありロアルド・ダールの心持は良いものではありませんでした。

挙句の果てにはロアルド・ダールの書いた脚本が、監督の知り合いにほぼ全て差し替えられるという暴挙についには激怒します。

そのような紆余曲折があり完成した映画『夢のチョコレート工場』についてロアルド・ダールはこう語っています。

ウィリー・ウォンカに重点を置きすぎて絶望した。

ロアルドダールにとって、一生懸命に書いた自分の作品を、意図しないように解釈されるのはとても悲しい出来事だった事でしょう。

ロアルド・ダールが映画化に対して慎重になるのも無理もありません。

だからこそ、自分の意図しない改変をされる恐れがある映画化に許可を出さなかかったのです。

それから時は流れ、1990年に原作者ロアルド・ダールが亡くなります。そして『チョコレート工場の秘密』の一切の権利は残された妻と娘が管理するようになりました。

権利が移った事で暗礁に乗り上げていたリメイクプロジェクトは再び動き始めます。

少し不謹慎かもしれませんが、ロアルド・ダールが生きていれば許可を取るのは不可能と思っていたところに、権利が遺族に渡った事で、これはチャンスだ!と映画関係者が思うのは当然の事でしょう。

そして映画関係者は妻と娘をついには説得しリメイクへ本格的に動き始めたのです!

しかし遺族も一筋縄ではいきません。以前の映画化で学び、今回の映画化の際には妻と娘が映画製作の最終決定権を握りました。最終決定権を持つという事は、契約上では監督やプロデューサーより偉いのです。極論ですが、映画を撮り終えて妻と娘が「これはダメだ」と言えばボツに出来るほどの力なのですよ!

原作者の関係者が絡む事により、大きな改変は出来ないかと思われましたが、この『チャーリーとチョコレート工場』ではなんと原作には無いはオリジナルのエピソードが挿入されているのです!

なぜオリジナルのエピソードを足して、原作者一族を納得できたのかティムバートンの狙いを解説していきます。

原作関係者も納得させる奇才ティム・バートンの凄さ!

チャーリーとウォンカの対比

原作と1971年版ではウォンカ自身については詳しく描かれておらず、彼がどんな人生を送って今に至るかは見た人の想像に委ねる形でした。

ティム・バートンはその事に注目し、ウィリー・ウォンカがなぜあのような性格になったのか、なぜあのような生き方になったのかという説明を足す事にしたのです。しかしそのエピソードを足す事によってウィリー・ウォンカにスポットライトが当たりすぎる懸念がありましたがそれは杞憂でありました。

ウィリー・ウォンカのバックボーンに支配的な子供時代の記憶、いびつな親子関係という過去を描く事により、世界観に奥行きを生み出したのです。それによって、チャーリーとの対比が生まれそれぞれの良さを殺さずにキャラクターの魅力をより引き立てる事ができたのです。

原作と1971版へのリスペクトを忘れない

1971年『夢のチョコレート工場』は、過剰なまでに極彩色の世界で繰り広げられるコミカルなミュージカルチックな映画となりました。ティムバートン版でもその世界観は受け継がれる事になりました。

本来であれば失敗した映画をリメイクすると、全く違うものになるはずですが、奇才ティムバートンは1971年版のチョコレート工場を否定せず、それをベースにして現代的に昇華させました。

カルト映画とマニアから評された独特なあの世界観を、豪華なセット、最新のCGを駆使してチョコレート工場を鮮やかに復活させたティムバートンの功績はもっと評価されるべきでありましょう。

ティムバートンが受け継いだのはビジュアルだけではありません。子供向けでありながらも所々にダークな要素が垣間見れるロアルド・ダールが得意とするユーモアも忘れずに脚本に取り込んだのです。しかしそれらはあくまで一つの要素に過ぎず、原作者ロアルド・ダールが伝えたかった根底にある、家族の愛や人間の弱さをチャーリーとウォンカを対比するオリジナルエピソードを挿入しこの映画をもっと高みへと押し上げたのです!

並みの監督であれば原作を忠実に描くか、1971年版を現代的に変換するだけの映画となった事でしょう。しかしそうはならず、公開されて時が経っても子供はもちろん大人も惹きつける映画となったのはティム・バートンのアイデアそして原作への愛と先駆者たちへの尊敬の念があったからなのでしょう。

本日の一コマ みんなのトラウマ、オーガスタス

チョコレート工場の最初の犠牲者?オーガスタス。彼はチョコレートを吸い上げるパイプにつまり、挙句にはタンクに吸い込まれて小窓から叫ぶというのっけから強烈なインパクトを与え、子供をそして閉所恐怖症にトラウマを植え付けた。その罪は許されませんよ。

でも仮に、チャーリー以外で友達になれそうと思うのは何だかんだオーガスタス・グループじゃないですかね。

ワガママっぷりさえ我慢して友達になったらお菓子いっぱいくれそうだし。いや、彼の性格なら全部僕のだ!と言って独り占めするだろうな。

先生!私はやっぱりチャーリーと友達になりたいです!


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